恵方巻についてのお話
1カ月も前から、近所のスーパーがやたらと恵方巻を宣伝しています。
「2月3日は恵方巻き」なんて宣伝がひっきりなしに流れていて、最早節分の豆を上回る勢いです。
そして、年々宣伝が大きくなっている気がします。縁起よさそうなものだしビジネスチャンスなんだろうなと。
この風習の定着には、結論から言えば海苔の組合やコンビニなどの商業戦略によるものが大きいようです。
http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/limedio/dlam/M99/M999179/11.pdf
この論文は、恵方巻を取り上げることで現代人における年中行事の意義を考察したもので、 この論文が疑問点の全てを言い表していました。
要は、
1.節分に食べる巻き寿司は、大正~昭和初期には大阪のごく一部で行われていた風習。その中でも商業組合による広告のチラシによって伝統文化であると宣伝されていた。
2.戦後から海苔の問屋の組合が宣伝に力を入れるようになる。特に1970年代以降、宣伝や都市の中心部でのイベントが活発になり、それがウケてメディアで取り上げられるようになる。これにより関西で広まっていった。
3.全国に普及していったコンビニが、段々と節分の巻き寿司を扱うようになる。その過程で「恵方巻」という名称がつけられる。そのコンビニを介して定着していった。
という流れのようです。
ちなみに、下記のように公式ホームページでは言及されていませんが、恵方巻と名付けたのはセブンイレブンのようです。
事の始まりは1989年、広島県のセブン-イレブンより。――その当時、関西の風習としてあった「節分の日にその年の縁起のいい方角(恵方)を向いて無言で太巻き寿司をまるかぶりする」という情報にもとづいて恵方巻を一部の店舗で販売したのが始まりです。『縁起のいい風習』としてお店で紹介しながら、翌年より販売エリアが広がり、95年には関西以西の地区に、そして98年には全国のセブン-イレブンで恵方巻を販売するようになりました。
今では、どこでも見られる恵方巻ですが…。|セブン-イレブン~近くて便利~
そして、スーパーやデパートでも活発にキャンペーンが張られる今に至る、といった流れのようです。
上記の論文にもあるように、活発に宣伝してもちっとも定着しないイベントもありますが、この恵方巻は見事に定着した感があります。
寿司は食べやすいですし、気楽に縁起を担げますし、家族で一緒に過ごせるイベントだからでしょうね。
そして、宣伝や商習慣によって伝統行事っぽくなっていくのは何も恵方巻だけではないです。
おせち料理も、この風習自体は江戸時代ごろからありましたが、今のように重箱に詰めるようになったのは戦後にデパートがその様な形態で販売したのが始まりだそうです。
土用の丑の日にウナギを食べるのも、江戸時代に平賀源内が宣伝したのが始まりと言われています。そもそもウナギの旬は冬ですしね。
世の中の伝統行事というのは、多かれ少なかれ、商業とか国策による刷り込みとか色々な影響を受けているものです。
まあ、この辺りの文化の変遷は調べるとほんとに面白いです。社会学とか文化学を学んで考察してみたくなってしまいます。